1992年3月 修士課程修了,2016年3月 社会人博士コース修了
(株)日立製作所 研究開発グループ 森田 裕
2017年3月14日,鎌田先生の最終講義がありました。「IREBと共に」(IREB: Intense Relativistic Electron Beam,大強度相対論的電子ビーム)と題した最終講義には先生がた,在校生,卒業生ら100人近くが集まり,いつもの笑顔で鎌田先生の講義が始まりました。
「ちゃんと聞いていたか確認しますので,学生さんはあとで当てます。」,「途中から思い出話になっちゃいますすけど。」一気に場が和んで,笑いに包まれます。
まずはパルスパワーの基礎から。そう言えば,研究室に配属になって最初のゼミで分布定数回路とパルス伝搬に関する講義を受けたのでした。今日はその復習です。先生の講義は直感的でわかりやすく,それは昔と変わりません。オーディオにも詳しい鎌田先生の講義は,同軸ケーブルやスピーカーのインピーダンスにまつわる実学にも触れながら進みます。これも昔と同じです。実験では50Ωの同軸ケーブルを1MΩのオシロスコープにつなぐと先輩から怒られたものです。
懐かしい写真が出てきました。先生によると,城内キャンパスの航空写真がなかなか見つからず,この写真は貴重とのこと。今は金沢城公園としてきれいに整備され,理学部のあった場所を知るよすがはありませんが,大手門と黒門のちょうど真ん中あたり,今は新丸広場と呼ばれているところに研究室がありました。
城内キャンパス時代のいわゆる”プレハブ”実験室の写真も出てきました。プレハブは黒門を上がって右手の高台の上にありました。夏の暑さをしのぐために,屋根には手作りの散水装置,室内には気分だけでも涼しくなるように,雪の兼六園の写真が貼ってあったと記憶しています。Google earthで確認すると,新丸広場の西側にプレハブに行くために昇った階段がまだ残っているようです。
いよいよ講義も佳境に入ってきました。城内キャンパスから角間キャンパスに移って,実験装置としてプレハブ時代のPULSERAD 105Aに220Gも加わりました。時間軸に沿って話が進みます。卒業生には思い出深い話ばかりで,専門的な話も先生のわかりやすい説明でよく理解できます。学生は専門的な研究は当然のこと,測定装置の製作や操作を通じて実学を学んだものです。かくいう私は,今でも老眼と戦いながらもハンダ付けをしたり,真空配管の漏れを探したり,学生時代に学んだ実学を存分に活かしています。
あっという間に最後のスライドになりました。PULSERAD 105Aも退役とのこと。「IREBと共に去らむとする時こそ ありがとう さようなら」とは,先生,かっこ良すぎます。最後に,先生が立ち上げた「サイエンスラボ」の紹介がありました。学科をまたぐ横のつながり,先生・先輩・後輩の縦のつながり,素晴らしい組織です。サイエンスラボの活躍も楽しみです。
最後に花束贈呈です。今日は「そんなものいいから,恥ずかしいから。」とおっしゃることなく,今日はしっかり受け取っていただけました。安心しました。鳴りやまない拍手の中,最終講義はお開きとなりました。
退役したPULSERAD 105Aの状況をお伝えします。すでに絶縁油を抜いて,分解されてビーム棟の外に搬出されていました。修理や部品交換の履歴が直接書いてあります,卒業生たちは「これ俺たちが修理したときのものだよ。」「外に出すと意外と小さいなぁ。」等と話しておりました。
実験室の現状はこちらです。この雑然とした感じがたまりません。古いものも大切に使われています。自分が作った装置もどこかにあると思います。
最終講義も終わって,先生も研究室に戻ってこられました。研究室にはお菓子が山積みになっています。卒業生はおなかを空かした学生さんのためにお菓子を差し入れするのが伝統となっていて,今日は当然ながら食べきれないほどのお菓子が並びました。誰かがコーヒーを淹れるのも恒例になっています。今日は卒業生の持参したミルで挽きたてのコーヒーを楽しむことができました。先生も交えて,昔話に花が咲きます。110Aの模型も出てきました。
なんと獲れたてのマグロの差し入れがありました。鎌田先生の「これ,どうすんだ?」の一言で,「今からさばきますよ。」の一言でマグロの解体ショーが始まりました。すぐさま反応し,「醤油とワサビある?」「冷蔵庫には・・・,うーん,無いです。」「じゃ,買って来よう。」と数人が行動を開始しました。このレスポンスの良さとフットワークの軽さ,これも誇るべき伝統です。獲れたてのマグロ,皆さんとおいしくいただきました。
先生との思い出話は尽きませんが,残念ながら今日は火曜日,遠くから来ている卒業生は帰る時間になりました。先生にそれぞれ挨拶をして,ひとまず散開です。6月には鎌田先生を送る会を開催予定ですので,またお会いしましょう。
最後になりましたが,鎌田先生,ありがとうございました,そして長い間お疲れさまでした。今後も定期的に説教を受けにまいりますので,お体をご自愛くださいませ。今後,卒業生が集まる機会を作りますので,しばらくお待ちいただきたく,よろしくお願いいたします。